ポール・ケネディ 国際安全保障体制 米国の傘 崩壊危機 地球を読む

読売朝刊。アンブレラという英単語から説き起こし、まず、欧州と日本の同盟諸国が米国に安全保障コストをおわせ、経済的な利益を得ているという米国の議会やメディアの批判をまず取り上げる。しかし、覇権主義的な帝国は、その戦略的な傘の下に集う国々よりも重荷を背負いより大きなコストを支払うのが普通だとし、まず、2世紀のローマ帝国の遠隔地にいた裕福な農民たちの例を挙げる。また、ローマ自身自身が永続的な平和と安定した通商という国際公共財が提供される中で、海外領土の冨の増大、穀物やオリーブ、スズ、材木その他の流入から恩恵を得たとする。第二には、パクス・ブリタニカ時代の世界システムが、19世紀における米国の驚くべき台頭をもたらしたとする。19世紀の大半、英国海軍が大陸の欧州諸国による西半球進出の機会をことごとく阻止し米国の防衛支出を極端に少ないままにとどめたという。英国の投資家や米国の都市、鉄道、保健会社、農業の発展のために何百万ポンドもつぎ込んだ。英国は、自国製品の輸出関税を高くする一方で、自由貿易を決して放棄せず、そのため米国の食料品、天然資源、工業製品に最大の開かれた市場を抵抗したとする。
ここで現在の世界に話は移り、米軍がイラク戦争などでどんなに戦っていも、石油とガスの価格高騰を防げず、どこかのただ乗り連中に巨額の儲けをもたらしてしまった。70年代はじめにもこのシステムは金本位制の危機によって痛撃を受けたが、過去20年間の地球規模の好景気で回復に向かった。今回は、次期米国以西件が気の利いた予算、財政政策をとれば、あと数十年にわたって傘を保つことは可能か、と議論を進める。で、最後に、ただ乗りの者を含め全員が国際的な公共財の供給に依存しており、その供給サービスを提供している国が苦難に向かっているとすれば、残り全員が同じ運命なのだ、と結ぶ。
最近の国際情勢を考える上で貴重な示唆を与えてくれる。
*危機対応の意思決定 日本の制度を作る時 五百旗頭真さん
毎日朝刊。米国は大統領により融通無碍に何でもできる。意思決定システムに完全無欠な模範解答はない。日本では首相の任期は短くかつ不安定。その分、制度をもって支えるべき度合いは米国より大きい。しかし、日本の安全保障・危機管理の制度も人も米国よりはるかに遅れている、とする。